「…キスして、いつもみたいに…」
沈黙を破ったのは永だった。すでに涙は渇き、先程とは違ってそこに表情は
存在していない。ただ声のみが懇願をしている。
一瞬の間。そして、
雪南は有無も言わず、彼女を壁に押さえこみ唇を重ねると舌を滑りこませ
た。舌を絡め思いきり吸い出す。お互いの唾液が首筋をつたっていくが、気に
とめない。ただ、荒々しいまでの行為。響くのは、短い呼吸と衣擦れの音だ
け。唇を少しづつずらし、僅かな呼吸を繰り返しながら二人はそれを続けた。
暫らくすると立っていることができなくなったのか、永はスローモーション
のように床に崩れ落ちた。雪南はそれを支えようともせず、その姿を冷めた目
で観察しているだけだった。そして、自分も床に屈むと、足元で恍惚の表情を
浮かべる顔をぞんざいに両手で掴み口の中に唾液を流しこんだ。
「飲みなさい」
「……う」
小さく頷くと、永は咽を鳴らしてそれを飲みこんだ。
「あつい…」
甘く粘り気のある液体は、異様な程の熱を持って咽を滑り落ちていく。
雪南には表情がなく、それをまるでモルモットの実験でも見るかのようにして
観察しているだけである。しかし、最後の一滴を飲み干した時に永が零した小
さな吐息が、彼女の攻撃性に火をつけたようだった。大きく開かれた瞳の中
に、さらなる炎が宿っていく。
雪南は自分の下で力なく横たわる身体に、更なる蹂躙を始めた。
左手で身動きできぬように永の身体を押さえ付け、膝下まであるスカートを
一気に腰まで捲り上げる。すると、太股に無数のキスマークが現れた。古いも
のもあれば新しいものもある。真っ白い肌に浮かび上がる血の色をどす黒く含
んだうっ血は見るからに痛々しいものであったが、それが、また雪南を喜ばせ
た。
右手がそれをニ度三度と撫で上げると、さらに無遠慮に侵蝕を続ける。そこ
はすでにショーツの上からも濡れていることがはっきりわかった。
雪南がそこを上から荒々しく指でなぞる。敏感な部分を通過する度に永の身
体が跳ね上がったが、必死で声を抑えていた。
「く、あ…」
永は知っていた。声を抑える苦悶の表情が雪南の求めるものなのだと。だか
ら、両手で顔を覆ってしまいたかったのだが、彼女はそれをさせじと腕を押さ
えつけてきた。遮るものを失い、直下の視線に晒される。
雪南の顔が、歓喜に歪むのがわかった。それを見た永の頬を一筋の雫が零れ
ていく。
彼女は、そのままショーツを引き千切るように強引に脱がせると、直にそこ
へ指を滑りこませた。十分に濡れているそこは、絡み付くように異物をいとも
簡単に受け入れていく。永は腕を回してキスをせがんだが、それに一切の反応
は返ってこなかった。
雪南はそこに指を突き立てると、機械的に動かし始めた。そして指を二本、
三本と増やしていく。永のそこは、それでも快感しか発生させなかった。
初めて異物を入れた時の激痛はすでに遠い昔のこととなり、今は熱い物を滴
らせ、理性を支配する場所になっていたのだ。
「う、あっ、ふっ」
声を抑えることは最早できなくなり、動く指に合わせるように次々と肺の奥
から搾り出されて来た。それと共に指の動きも激しくなっていく。部屋の中に
は、液体を打ち付けるような異様な音が響き渡る。
そして「指に絡み付く肉片と粘膜が熱さで溶けてしまいそうだ」永は快感に
身を全て委ねながらも、冷静に自分の身体の状態を分析していることを不可解
に思いながら、最後をむかえた。
雪南はその仕草を見逃すまいと、永の顎を持ち、強引に顔をこちらに向けさ
せる。そして、同じように恍惚の表情を見せたのだった。
指を引き抜くと、それを永の顔の前に翳した。指は独特の光沢を放ってい
る。雪南は何も言わなかったが、目が語っていた「舐めて綺麗にしろ」と。一
瞬の躊躇の後ではあったが、永はそれを口に含んだ。特徴ある酸味が舌を刺激
していく。
雪南の顔からは既に笑みは去り、興味を無くした子供のように表情が消え失
せていた。
永の瞳からは、再び涙が溢れ出していた。
雪南はそれには目もくれず、立ちあがると部屋中の窓を全て開け放った。充
満してしまった二人の「匂い」を消すためだろう。
吹き抜けていく風が体に当たると、ひんやりとした清涼感が一瞬だけ体を通
り抜けていった。永は倒れたまま、相手を視界に入れた。彼女は何事もなかっ
たように椅子に座ると冷たくなっているはずの紅茶を口に含んでいる。
涙が止まらない。
雪南は好きでもない人間と行為に及ぶことができる。相手の気持ちを知って
いて尚且つ、それ自体を楽しんでいるだけだ。それは十分に理解しているの
だ。だから、彼女が悪いわけではない。
自ら望んでしていることなのだ。
気持ちで彼女を振り向かせることができないのならば、自分にできることは
身を使うことだけ。
なんて馬鹿げた行為であろうか。
しかし、それでも良いと思っていた。自分を傷つけても、彼女を感じること
さえできればいいのだから。それほどまでに自分は目の前にいる人間が好きな
のだ。
狂おしいほどに。
「悲しみ」「怒り」「喜び」そして「罪悪感」いずれとも違う感情が頭の中
を覆っていく。はっきりしているのは自分が沈んでいく感覚のみ。
深く
深く
遥か深く。
※※※
全然エロくないです。というか痛そうですね。
エロく無いというのは、カットした理由の一つです。
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